声明(しょうみょう)とは、奈良時代から1200年の伝統を持つ、日本の伝統音楽。伽藍に響く透明な肉声は厳粛で、日本のグレゴリオ聖歌とも言えるし、知らない方には「お経のコーラスだよ」と説明しています(^^;
神奈川県立音楽堂は、築は古いですが、音響が良いことで定評があるそうで、生の声を響かせるだけのシンプルな音楽には最上のステージです。
私が声明に興味が強いのは、「倍音」が好きだからです。倍音とは、いろいろな音を重ねることで、周波数が倍数となる音が響く現象で、「聞こえない音」が聞こえてきます。
天女のような高い声が混じったり、篠笛かフルートのような笛の音のようなものが聞こえたり、また逆に、船の汽笛のようなボーと低い唸りが響いてきたり、と神秘的。「笛の音」は割と聞こえやすいので、仲間内では倍音を「ぴーひゃら」と呼んだりしています(笑)。
感性が高まるともっと聞こえるらしく、シャンシャンという鈴の音のような音や笑い声、般若心経が聞こえてくるという友もいるのですが、私は「ぴーひゃら」くらいしか聞いたことがありません。
そして、倍音が聞こえる状態とは、潜在意識が開き、「見えない世界」に繋がると、言う人もいます。私はそこに興味があって、とても倍音に惹かれるのです。
天台宗と真言宗の僧侶の方々が15人くらいずつ、交互に。
天台のお坊さん方は、鈍い緑と茶の袈裟で、わびさびな装い。真言のお坊さんたちは、紫・黄・黄緑・水色、ときらびやか、どちらかというと中国風味?な対照も面白い。
まずはソロから始まり、唸るような声が、よく響くホールにこだまします。やがて複数名で同じ旋律を合わせて歌います。基本的に「お経」で二からユニゾン(斉唱)です。普段聞くお経と違って、長く伸ばしたりこぶしをまわしたり。
そして、掛け合いのようになったり、同じ言葉を「輪唱」したりして、声が重なってくると、空間に厚みが出てくるような感じがします。
まるで音のシャワーを浴びているような。まるでバイブレーションのお風呂に漬かっているような。耳だけで聞くのではなく、空間全体を感じるような、それが声明の醍醐味です♪
そして、圧巻は、「新作声明」。倍音に惹かれた若き作曲家・宮内康乃氏の新作だそうで、古典音楽に「新作」があるとは思ってもみなかった私には新鮮でしたが、これが感動!
今回は、東日本大震災の津波で亡くなられた方が震災1年前に詠んだ和歌
「海霧に とけて我が身も ただよはむ 川面をのぼり 大地をつつみ」
を声明に仕立てたものです。「千の風になって」を思わせる、スケールの大きな世界観です。
そして、ステージと客席をねり歩きながら、全方位でつつむ演出。伸ばした母音のひびきが重なり合う重層感は、圧倒的な倍音を生みました。
数多くの方々が「海霧にとけて」いったに違いない。きっとこの会場には、この歌を詠んだ故人やゆかりの方々の魂が来ているに違いない。歌いだしてほどなく、そう思うと涙が流れ始め、止まりませんでした。
「魂が動く」。この涙は私が倍音を聞くとよく起こる現象で、「ああ、意識がどこか外れたんだな」と今回も思います。
声明はたんなる音楽ではなく、ほんらい鎮魂の祈りなのだということがよく感じられて、感慨ひとしおでした。
ラストは、真言のお坊さんたちが般若心経、天台のお坊さんたちが「南無阿弥陀仏」のリフレインを重ねていくというもの。二つのお経が交じり合いこだまし合う様は、エネルギーの唸りを生むようでした。
大満足の90分はあっという間でした。
声明コンサートを聴くのは今回で2回目ですが、ますます虜になりました。
意識はバイブレーションであり、音によって開かれる、という感覚ますます。多くの方に体験していただきたい素晴らしい場だということを確信です。
《2014.4.13追記》
コメント欄にて、「CDは買えますか?」とのご質問をいただきましたので、アマゾンのページをお付けしました。チェックしてみてください!
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会津 いつこ (金曜日, 11 4月 2014 13:50)
高齢の知人が、お坊さんのコーラスを聞いて、CDまたはカセットがほしいから探してほしいと頼まれています。どこで買えますか?
PADOMA (日曜日, 13 4月 2014 14:31)
>会津いつこさま ページに来ていただいて、ありがとうございます。
記事の最後にアマゾンへのリンクを貼っておきました。
ご利用ください♪